平成24年九州体育・保健体育ネットワ-ク研究会報告2012/8/4

平成24年8月4日(土)長崎県立総合体育館大研修室にて、九州体育・保健体育ネットワ-ク研究会「第2回長崎ちゃんぽんラウンド」が約30名の先生方が参加されて開催されました。一参加者として報告させていただきます。
今回の研究会の主な内容は以下のとおりです。

保健の授業づくりのポイント

文部科学省 教科調査官 森 良一先生

文部科学省の森 良一先生からは、保健の授業づくりのポイントというテ-マで、今回の学習指導要領改訂のポイントについてまず説明があり、それを踏まえての学習内容と指導方法の工夫の必要性について解説していただきました。
はじめに、日本では「保健体育」という世界に例をみない独特のカテゴリ-で、保健と体育が国民の教養として位置づけられ学ぶことになっていることをお話されました。
次に、小学校24時間、中学校48時間、高等学校1・2年生で2単位時間、発達段階に応じて継続的に内容の系統性が図られて、それぞれのねらいを持って実施されているのは日本だけであり、そのことが国民の健康・安全にとても良い影響を与えていること、さらにより良い授業づくりのためには、子どもには見えない学習内容を子どもに見える指導方法を工夫することが大切あることを強調されていました。指導方法としては、発問や教材の工夫や学習カ-ドの工夫があること、特に、発問・教材等の工夫については、具体的に発問例をいくつか示していただき、とても参考になるお話でした。

小学校体育コ-ディネ-タ-派遣のその後…

長崎市立小島小学校  教諭 竹村 尚史先生

長崎市立小島小学校の竹村 尚史先生からは、昨年度に小学校体育コ-ディネ-タ-が派遣されて、体育の授業がどのように変わったのか、また、今年度は派遣されないことからどのようなことが課題となっているのかなどについてお話がありました。
 体育コ-ディネ-タ-の派遣によるメリットとしては、優れた体育の教材・教具の紹介や準備、授業の行い方、体力向上の取り組み、水泳指導などのアドバイスに加え、体育委員会、スポ-ツ大会のお手伝いなど、さまざまな場面での支援をいただき、とても良かったということでした。今年度は派遣がないために、ギャップは大きいものの昨年度の単元計画や学習資料やカ-ドを活用しながら、授業の質を落とさないようにしたり、「小学校体育まるわかりハンドブック」を活用して体育学習指導の充実を図りたい、という報告がなされました。

ディスカッション 「これからのスポ-ツ・体育の在り方」について

座長  鹿屋体育大学教授 佐藤 豊先生
ゲスト
イギリス ベッドフォッシャ-大学 デビッド・カ-ク教授
アメリカ オハイオ州立大学 ジャキ-・グッドウェイ博士



まずはじめに、現職教員や体育大学の学生のグル-プと教育委員会や大学の教員のグル-プに分かれて「体育の授業の現状とその問題点は何なのか」についてのディスカッションを行い、それをもとにして、鹿屋体育大学の佐藤 豊先生がコ-ディネ-タ-として「これからのスポ-ツ・体育の在り方」について討論会が行なわれました。
 なお、今回は現在の世界の体育をリ-ドとしていると言っても過言ではないイギリス ベッドフォッシャ-大学 デビッド・カ-ク教授とアメリカ オハイオ州立大学 ジャキ-・グッドウェイ博士のお二人が佐藤先生のご尽力で参加していただきました。世界的にもお二人の先生のお話を同時に聞く機会はほとんど無いのではないかと思われます。そのことだけでもとても貴重な研修会であり、お二人の先生の情熱あふれる世界の体育の現状や課題解決のコメントに、改めて日本の保健体育のあるべき姿や進むべき方向が鮮明に感じられました。
 特に、デビッド・カ-ク教授からは「各国の収入格差と肥満、ドラッグ、刑務所に服役している人数、乳児死亡率の関係について」のグラフを示していただき、各国の社会の状況がちがうことを念頭にして体育の在り方を考えなければならないことの説明がありました。このことを受けて、ジャキ-・グッドウェイ博士からは、アメリカの小学校において貧困層の子どもたちの体育の時間が少ないことや多様な動きの時間が少ないこと、体育の専科の先生がいないことによって、スキルが身についておらず、中学校や高等学校段階での生徒の運動・スポ-ツ離れが問題になっているとの指摘がなされました。ちなみに日本は、全てのデ-タにおいて世界の中で突出して収入格差が少なく、社会や健康問題が少ない現状にあることがはっきりと示されていました。
 さらに、お二人の先生からはナショナルカリキュラム(日本でいう学習指導要領)の有無を含めた現状のお話や教員同士のWEBでの研修の必要性、教員の体育に対する意欲を高めることの必要性など、全ての国にとって必要であるとのコメントがとても心に残り、これからの体育の在り方のヒントを沢山得ることができる貴重な研修会でした。

最後に、このような素晴らしいゲストを交えた研修会を企画・運営していただいた佐藤先生をはじめ、九州ネットワ-ク研究会の担当の先生方および通訳をしていただきました筑波大学大学院卒業の津田絵美様に感謝申し上げます。