幼稚園部会

幼稚園部会では、ほとんどの大会で1分科会での開催であった。したがって、ここに幼稚園部会での分科会主題と研究概要を並べることは、部会発展の歴史を振り返り、成果を確認することになろう(すべての分科会主題と研究概要を載せてはいない)。

幼稚園部会の変遷

幼稚園部会が初めて持たれた第12回大会(1973年)において、「動きづくり」の観点から健康教育を検討したことに始まり、幼稚園部会での研究は常に「動き」「運動遊び」に焦点をあててきた。

「動きの豊かさの追求」から「自主的、主体的な運動」そして「動く楽しさを味わい夢中になって遊ぶ子ども」が追求された。当初は系統的・段階的運動遊びの探究もなされたが(第14回大会)、自由な活動形態、自由な時間の確保へと視点は移行していった(第22回大会、第23回大会、第26回大会)。

そして、これは幼児の自主性を保障する指導あるいは環境の中で「のびのびと安心して活動する幼児」を生み出してくる(第29回大会、第32回大会、第34回大会)。このことは幼児が「運動する楽しさ」「できた喜び」を得ることになるが、同時に、これらの楽しさや喜びを共感する仲間や支援する保育者の存在の意味がクローズアップされてくることになり、遊びや人間関係の広がりも見られるようになってきた(第32回大会、第33回大会、第35回大会)。

しかし、近年は「急速な時代の変化に伴い、本来幼児期に獲得する力が十分身につかない子どもも見られる」ようになり(第36回、第38回、第39回)、あらためて「表面的な結果を急がず、子どもの思いがゆっくり膨らんでいくのをじっくり見守り、子どもの経験・行動を大事にしながら一人ひとりを認め、援助する大切さ、発達や状況に合わせた環境構成の大切さ」(第39回大会)が、認識されるに至っている。

幼稚園部会分科会主題および研究概要要覧
第12回大会 分科会主題「健康へのとりくみ」
研究概要:意欲的に活動する子をめざして、活動的な体力と心理的な作用の働きを活発にする「動きづくり」の観点から健康教育を検討した。運動遊具としてボールを使用し、「ボールとの出会い」「ボール運動の基本をみつける」を大切にして保育し、動きの変化・多様化、積極的・自主的な生活態度への変化といった成果があった。
第14回大会 分科会主題「幼児の特性に応じた運動・遊びの指導」
研究概要:幼児期の運動・遊びの指導は全身的活動を多面的に経験させながら、心身両面の総合的取り扱いへの留意が必要である。家庭での遊びの実態調査と運動技能調査によりながら、指導計画を作成し、実践している。指導計画は、幼児の姿、ねらいに留意しながら、経験活動と運動遊び。(基本的な動き、固定遊具遊び、移動遊具遊び、集団的な遊び)を系統的・段階的に配列した。
第18回大会 分科会主題「自ら運動や遊びに取り組む幼児を育てるために」
研究概要:幼児の行動記録をもとに検討、考察し、次の結果を得た。1)指導の在り方を検討するにあたっての配慮事項、○イメージを豊かにし、自分の動きに取り組ませる ○運動の内容が高まる援助の仕方 ○遊具使用の指導法 ○遊具使用上の態度 ○運動活動の保証 ○安全指導 2)運動遊びの意義 ○運動欲求の向上 ○多様な動きの獲得 ○イメージの拡大 ○友達との交流体験 ○遊具への知識 ○態度の獲得 ○諸感覚の拡大 ○挑戦欲求の充足と満足 ○試行錯誤の体験。
第20回大会 分科会主題「日常保育の中のからだづくりを考える」
研究概要:たくましい心と体を育てるには、日常保育指導の中で、できるだけたくさんの動きを経験できるような環境づくりと動機付けが必要であると考え、以下の実践を行った。1)身体活動が豊かになるよう精選して題材を展開し、そこから動きの発展(遊びを見つける-心が動く-動きたくなる-楽しく動く)を図った。2)体を意識して動かすよう、毎日の園生活に乾布摩擦、伝承遊びを位置づけ、体のどこをどう動かしたらうまくいくかの工夫をさせた。
第22回大会 分科会主題「仲間と夢中になって遊ぶ子供を育てるためにはどうすればよいか」
研究概要:幼稚園の「健康」領域の運動を総合的な遊びの1つとして捉える。個の全身的な遊びから、より良い集団化へ発展していく遊びを検討した。その際の教師の配慮は次のようになる。自由な時間の確保、許容範囲の拡大、遊具使用法に固定概念を持たない、全身運動への環境整備、幼児の発想の尊重、共感、共に遊び考える、観察。
第23回大会 分科会主題「みんなで楽しく運動遊びをするにはどうすればよいか」
研究概要:幼児が積極的に運動遊びに取り組むことを願って、運動に対する自発的・自主的態度(好きな遊びを見つける・自分で工夫する・友だち関係を広げる)、教育的意図(多様な遊び体験・個々に応じる・運動環境の工夫)、関わり方(発問・助言・援助・資料の提示)を想定し、3つの活動形態(自由な活動・決まったスペースでの活動・一斉活動)での実践を行った。運動する喜びを身体的(活動、挑戦、達成)、精神的(意欲、工夫、発見)、社会的(協力、賞賛、健康安全)要素からとらえ、これを味わうために直接的(健康安全、ゲーム化、模倣化、競争化、計測化、助言、指示、師範、問題提示、賞賛、激励)手立て、間接的(場の設定、学習カード、用具の工夫、機器の活用)手立て、社会的(協力、発表、話し合い、グループノート)手立てによる実践を行った。体育学習の流れは、知る-運動する-まとめるとし、それぞれの場面での主体的学習を追求した。
第25回大会 分科会主題「いきいきと活動し、友達と響き合う運動遊びを考える」
研究概要:<目的>友達とともに、身近な生活経験や自然とのふれあいにより好奇心、探求心を刺激し、遊びの創造、運動好きな幼児の育成を図り、仲間意識や社会適応の基礎作りを目指す。
<方法>感動をおこす環境設定と遊びを誘発する素材および遊びを多様化させる遊具・用具の検討、動きのイメージ化と遊具・用具の活用や友達との遊びへの教師の働きかけの模索。
<結果>身近な生活再現遊びは、運動のおもしろさや友達とふれあう楽しさに気づくことに有効であった。遊具の共同製作は、遊ぶことへの意欲や仲間意識を向上させた。教師が教材研究等の自己研修にもとづきながら幼児の心情理解にそった待ちの姿勢や手だてのヒントが主体性を育て、遊びを発展させる。
第26回大会 分科会主題「自分から進んで運動遊びに取り組んでいく幼児を目指して-戸外で体を動かして遊ぶ活動を中心に-」
研究概要:これまでも運動遊びの指導にあたり、幼児が喜んで遊べるようにとの配慮はしてきたが、教師が意図し計画した活動が押しつけになり幼児の自主性を阻害していたのではないかとの懸念があった。そこで、幼児が自由に遊ぶ様子の観察(自分の力でどのように環境に働きかけ活動しているか)、その結果の分析考察を行いながら、自ら進んで運動遊びに取り組む幼児をめざし、実践に取り組んだ。実践を通して、発達に応じた指導の要点をとらえることができた。また、よりいっそう繊密な計画と適切な配慮が大切であることがわかった。なお、その開放感や体の動きの活発化、友達とかかわる機会の増加などから楽しく遊べるという点で心や体を育てる上で欠くことのできない経験であることより、戸外での活動は以前から重視している。
第28回大会 分科会主題「体を十分動かし、よろこんで遊ぶ幼児を求めて」
研究概要:過保護、親に言われたままに行動する幼児が多い実情より、自分から進んで活動に取り組む幼児の育成を目指し、主体的な活動を促す環境構成のあり方を探る。心身の発達が大きく変容する発達の節(期)に着目し、幼児の実態、各期のねらいを明らかにすることで年間指導計画を見直す。日々の保育では、興味や欲求に応じた環境の再構成とそれぞれの幼児・事例に即して分析・考察を行いながら、見守りや援助を行う。その結果、実情にふさわしい環境
設定の工夫とその時期に見合った体の十分な動きを引き出すことができた。一人ひとりの幼児が安心して思い切り遊びを楽しみ、意欲的に遊びに取り組む姿や遊び方の工夫などがみられた。
第29回大会 分科会主題「幼児が生き生きと体を動かし活動する指導の在り方-運動遊びを中心に-」
研究概要:素直で快活な幼児も多いが、依頼心が強い、友達関係が希薄、自主的・主体的に遊ぶことが少ないといった幼児も見受けられる。体を十分に動かすことが心も体も満たし、生き生きとした幼児を育てることにつながると考える。幼児の姿を的確に見取り、遊びへのさまざまな思いを展開、実現できるように実践の過程を記録化し、どのように遊び、何が育っているのかを見極めつつ、より適切な環境構成や指導のあり方を探る。日々の保育で特に配慮するのは、共に遊ぶ、遊びをサポートする承認と共感である。実践の結果、次第に「幼児の立場」に立つ指導を心がけるようになり、幼児の変容を客観的に見取る教師の姿勢もできてきた。教師との信頼関係、安定した友達関係の中からこそ、自主的に遊びを作り発展させる手がかりが得られた。幼児の「挑戦してみよう」「おもしろそうだ」という気持ちを汲み取ることや共感したり認めたりする教師の一言の大切さなどがわかった。
第32回大会 分科会主題「子どものこころとからだを育てる保育を求めて-遊びを通しての動きの教育-」
研究概要:園の目標とのかかわりの中で、幼児一人ひとりがのびのびと楽しくからだを動かして遊べることをめざして主題を設定した。子どもたちの遊びの保障をしながら、子どものこころとからだを育てる運動保育のあり方を追求した。<目標>「のびのびと全身を使って」「友だちとかかわって」「好きな遊びを見つけ夢中になって」、「自分の思いを表現しながら」遊ぶ子どもの姿をめざす。
<方法>「動き」に焦点を当てた実践を進める。具体的には、園児の運動能力・遊び・家庭での生活の実態把握、特に遊びの中に含まれる動きの分析を行う。これらの基礎資料をもとに保育計画の見直しと運動遊びの実践、父母への働きかけをすすめる。
<結果>子どもたちは年齢が進むにつれて運動の獲得数が増えるとともに、遊びへの意欲も増し、全身を使って集中して遊ぶようになった。遊びの広がり、友だち関係の広がりも見られた。また、教師の子どもを見る目も変わってきた。
第33回大会 分科会主題「十分に体を動かし、楽しく遊べる環境と援助のあり方-子どもが進んで取り組んだ遊びから」
研究概要:人間形成の基礎となる幼児期に、自分の持てる力を十分に発揮し、友達と一緒にいろいろな遊びを経験しながら、体を動かす楽しさを十分に味わうことが大切であると考える。そうすることで、「やってみよう」という気持ちが育ち、その気持ちが生涯体育・スポーツの基礎になるものと思われる。
<目的>環境に関わる子どもの姿を追いながら、生き生きと活動するための援助のあり方を考察。
<方法>子どもの実態把握。指導計画や環境の見直し。実践に際しては、子どもが見つけた遊びから体を動かす楽しさが味わえる遊びを見つけ出し、その援助方法を考える。また、その遊ぶ姿を見つめ、喜んで遊ぶための援助方法の検討。反省・評価。以上の過程を循環的に繰り返しながら事例に即して考察を深める。
<結果>子どもの気持ち、考えや思いを受け止め、認めてあげ、その上で援助することが大切。子どもにとって、特に運動的遊びでは、できなかったことが「できた」喜びはとても大きく、その時、その瞬間を共感してくれる仲間や保育者がそばにいることで喜びはいっそう大きくなり、次の活動への意欲につながる。子どもと一緒に遊びながらその子にとっての大切な時期やタイミングを見逃さない努力が必要である。
第34回大会 分科会主題「一人一人が体を動かし、遊ぶ楽しさを味わうことのできる保育を目指して」
研究概要:体を動かす遊びに取り組もうとしない、あるいは体を動かして遊ぶ楽しさに出会えていない幼児が見られる。このような状況から、体を思い切り動かす楽しさ、心地よさを実感できる経験を重ねていくことの必要性があると捉え、そのための環境や援助のあり方を探る。
<方法>生活の中で、幼児が心を動かす場や状況、心を動かしていくプロセス、および幼児の心の動きに呼応した具体的な環境や援助のあり方を探る。
<結果>安定できる場があり、自由な雰囲気があることが基盤となり、その中でやりたいことが十分やれる時間や生活が保障されていることが大切だとあらためて分かった。
第35回大会 分科会主題「一人一人が体を動かし遊ぶ心地よさを味わえる保育のあり方-環境や援助のあり方をめぐって-」
研究概要:「心の通い合う保育」に努め、優しくたくましい子どもの育成を目指す。遊び込んでいる時の幼児は、それぞれに思いを巡らし、夢や期待を膨らませ、心地よさに浸っている。このような心地よさの場面をとらえ、その内面(気持ち)にあるものを探ることで一人ひとりに沿った柔軟な援助ができると考え、主題に迫る。
<方法>「心地よさを感じる姿」「心が動くとき」「環境や援助」の関連からテーマの具現化の構想を立て、それに基づく実践を展開する。実践を通して「信頼関係づくり」「子どもが示した興味・関心のとらえ方」「保育者の意識の見直し」「時間や場の保障、雰囲気づく り」の点について検討する。
<結果>信頼関係が基盤となり、めあてを持って安心して遊ぶようになった。より幅広い心情面のとらえにより、柔軟な援助ができるようになった。今後の課題は、遊びに対する思いや経験、年齢の違う子どもたちがひとつの遊びの中で共通して遊べるような援助のあり方を探ることである。
第36回大会 分科会主題「自ら全身を動かして遊ぶ喜びや心地よさを味わうことができる環境と援助の在り方-心も体もふれ、ゆれ、はずむ環境の創造-」
研究概要:急速な時代の変化に伴い、本来幼児期に獲得する力が十分身につかない子どもも見られる。自分で考えての行動、体験を通しての学びが少なくなるとともに、思い切り体を動かして遊ぶ満足感、粘り強さ、人を思いやる心、何事にも意欲的に取り組む力などが育ちにくく、活力に満ちた心身の動きが少なくなってきている。このような状況から、豊かな未来を開くためのしなやかな心と体を育んでいきたいと願い主題を設定した。周囲の事物に関心を持ち自ら心を動かすことが(ふれ)、意欲的な活動へとつながり(ゆれ)、主体的に遊びを展開していく態度につながっていく(はずむ)。これらが互いに連動しながら幼児の成長を促し、「おもしろそう、やってみよう、できた、楽しいな、またやりたい」などの満足感や成功感となり、心地よさを生み出すものと考え、心も体も「ふれ、ゆれ、はずむ」環境の工夫や援助の在り方を探ることにした。園内および園周辺地域環境を見直すとともに、事例に即して保育環境を(幼児の環境との出会い方や興味の在り所や心の動き、友達や先生とのかかれり方、楽しんでいる内容、身につく内容の点から)見直しながら積み重ねた実践である。
第38回大会 分科会主題「幼児の興味や欲求を受けとめ、のびのびと自己発揮できる幼児を育てる環境構成の在り方-弾む心・弾ける体-」
研究概要:現代の子どもを取り巻く環境は、子どもの健全な遊びや成長を脅かしていると言っても過言ではない。このような状況下、安全な遊び場の確保、幼児期の発達にふさわしい生活を展開していく幼稚園教育の果たす役割は大きい。心身の調和的発達が促され、健康に育っていくことを考えるとき、子どもの興味や欲求を汲み取り、やりたいことが楽しくできる環境を用意することが、教師として大切な役割だと思う。
<目的>幼児の興味や欲求を受け止め、のびのびと自己発揮できる幼児を育てるための環境構成の在り方を探る。
<方法>健康な心と体をはぐくむ環境、教師の対応の在り方、家庭・地域との連携を重点に、幼児の実態を探りながら、かかわる。
<結果>運動的な遊びに限らず、一人ひとりの興味に合ったものから入って行けるよう、多様な経験をさせることが必要。一人ひとりの成長と向き合い、心の奥に見え隠れしている気持ちを受け止めることが大事。
第39回大会 分科会主題「総合的な保育の中で、園児人一人のいのちの輝きを大事にし、友達との育ち合いを大切にした活動の実践をめざして」
研究概要:子どもたちのおかれている生活環境が大きく変わってきた。このような社会の中で、子供たちの育ちにとって本当に意味のある空間や時間とは何なのかを問い、幼稚園教育、教師の果たす役割について考える。子どもと共に共感する思い、友達と過ごす楽しさ、葛藤と挫折の繰り返しの中から、心の広がりや生きようとする力を呼び起こすことを願って、取り組んだ実践である。表面的な結果を急がず、子どもの思いがゆっくり膨らんでいくのをじっくり見守り、子どもの経験・行動を大事にしながら一人ひとりを認め、援助する大切さ、発達や状況に合わせた環境構成の大切さが、実践を通してわかった。
第40回大会 分科会主題「幼児がのびのびと自己を発揮し、友達と一緒に喜んで運動遊びを楽しめる環境を考える」
第41回大会 分科会主題「 心身ともに健やかな子供を育てるための、豊かな生活の創造」
第42回大会 分科会主題「心も体も元気いっぱい意欲にもえるたくましい子どもをめざして」
-教師のより良いかかわりあいを考える-
「こころや体を動かすことを楽しむ子どもを育てるために」
-教師がひらく子どもへの援助-
第43回大会 分科会主題「心とからだがはずむ幼稚園生活」
-しなやかな心とからだを育み、自己発揮できる保育の在り方-
第44回大会 分科会主題「集団的なかかわりの中で育つ、個と個の関係性」
-夢中になる遊びを通して-
第45回大会 分科会主題「 しなやかな心と体の育成をめざして
~体を動かす喜びを引き出す協同的な活動~
第46回大会 分科会主題「健やかな心と体を育む保育をめざして」
~心をはずませ、体が動く遊びを創り出すことで~
第47回大会 分科会主題「学びの基礎を培う遊びの充実を目指して」
~しなやかな心と体を育む遊びの環境を考える~
第48回大会 分科会主題「運動の心地よさを味わわせ挑戦する意欲を育てる運動的な遊び
-体を動かす喜びと体験を豊かにする環境の構成-